オステオパシーの哲学は、難病や慢性痛、一般的な頭痛や腰痛などで困った方の手助けになるのはもちろんですが、健康だけどケガをした、筋肉や関節がスポーツをした後に痛くなったなどの運動器系に対しても有効的な方法となります。局所的な運動器疾患に対しての施術を行う際も、オステオパシーのコンセプトである全身的なアプローチを行い、いかに早く身体を良くするか?どのような視点で観ているかを解説します。
運動器系の機能障害で観ているポイント
オステオパシーの創始者Dr.スティルはこう記しています。
「それを見つけて、治し、あとは自然に任せなさい」 (それ=体性機能障害)
スティル医師が言及した「それ」とは何か?
●定義 障害のあるもしくは変化した体性系に関係する構成要素。下記を含む、骨格、平面関節、筋筋膜とそれらに関連する脈管、リンパおよび神経の要素
●T.A.R.T
・Tenderness(圧痛) ・Asymmetry(非対称性) ・Restriction of Motion(可動域制限) ・Tissue Texture Change(組織の質感の変化)
体内のどのような組織にも正常に機能しているときと、そうでない時には組織を触診した時の感覚が異なっています。スティル医師はこの変化を見つけて治すようにと伝えています。
では、どのように見つけて、どのように治すのか?
●スクリーニングテストとスペシフィックテスト
・患者の全身状態に最適なテスト
・それぞれの部位に最適なテスト
全身のゆがみなどを評価して、その人の状態を把握していきます。そして患部の腫れや痛みを観察し、動きの検査を行っていきます。
ポイント! 全身の状態把握は姿勢の緊張や代償機能損失をスクリーニングして見つけることから
運動器系機能障害のスクリーニング検査
全身の検査を行う際には、立った状態の患者に対し、施術者は背面からランドマークとなる骨の高さなどをみて、姿勢の非対称性を観察します。具体的には、頭の下方にある乳様突起、肩甲骨の下角、骨盤の上のライン(腸骨稜)、大腿骨の大転子という部分の高さを術者は左右同時に触ることで、その高さの違いを観察します。
同時に背骨のラインに指を沿わせて、背骨の弯曲も観察しています。
次に患者は座位になり、先ほど立位でみたゆがみが座位でも同じパターンなのか、変化があるのかを観察し、ゆがみの原因で大きいものを見つけていきます。
仰向けなった状態のスクリーニングとしては、ジンクアプローチという筋膜の動きを評価します。
人体には解剖学的ー機能的な移行ゾーンがあります。首ー背中、背中ー腰、腰ー骨盤。これらの移行部に術者は手を当てて、筋膜の動きを検査していくのです。
筋膜の捻じれのパターンには良い捻じれ(ゆがみ)と悪いゆがみがあり、ジンクパターンの考え方では、首から骨盤まで左右交互に捻じれている場合は、代償が出来ていると考えます。逆に、首も背中も腰も全て同じ方向(例えば左側)に捻じれている場合は、上手く代償できていないと考えています。
具体的な組織の臨床症状
全身のスクリーニング検査で背骨や筋膜の捻じれを評価したら、そこで現れた背骨のゆがんだ部分を局所的に動かしてみて、どの方向が動きにくいか?を検査していきます。そこから出ている末梢神経が、症状が出ている部位に影響を与えている可能性がある為です。
そしてやっと、実際に症状が出ている部分を触診していきます。
●組織ごとにみられる症状
・皮節(神経や神経根障害でみられる)= 皮膚の知覚麻痺や知覚異常(浅層)
・筋節(筋肉)= 痙攣、皮膚の痛み、緊張などの観点から筋の緊張やゆるみを観察する
・硬節(靭帯、関節、骨)= 深く、うずきを伴う関節炎や歯痛に似た疼痛
ポイント! 硬節の痛みは筋骨格系において重要な施術部位
通常、ケガをしたらその部位は腫れ、痛み、熱感、赤みなどの炎症反応が出ています。これらを放っておくと、機能障害は長引くばかりか、予後が悪いと言われている為、この部分に対して良い位置に戻してあげることはとても大切です。
しかし、ケガをしていなくても関節などが痛くなることがあり、これは硬節の組織の症状が出ている証拠です。
この部位に対してもオステオパシーの手技治療を行い、症状の軽減を図っていきます。
オステオパシーのテクニックは多岐にわたり、その症状や損傷組織、ゆがみの部位によって使い分けていきます。大事なのは、テクニックは道具の様なものであり、なんの道具をどの場所に、適切に使えるかということです。
そのために、全身のスクリーニング検査から行い、ゆがみの原因を見つけて神経学的な影響を考えた上で、症状が出ている部位を検査し、組織の状態からどのような部分にアプローチするかを決定します。
具体的な症状(寝違え、腰痛、野球肘、テニス肘など)は別記事にて。
様々な運動器系の症状でお困りの方は、宜野湾市のさくがわ接骨院へ