先日脊柱の関節のつくりと、頸椎・胸椎・腰椎それぞれの特徴や動き方をお伝えしました。しかし、関節の動きにはそれらの運動に働く筋肉があります。今日は脊柱の運動に関係する筋肉について、特に首周りの筋肉をご説明し、損傷の特徴をお話しします。
脊柱の運動に働く筋
脊柱=背骨の運動に働く筋肉を固有背筋といい、食肉でいうロースの部分にあたります。固有背筋は胸腰筋膜という膜で包まれています。
首の運動には固有背筋に加えて後頭下筋、椎前筋群、胸鎖乳突筋が働き、腰の運動には腹壁の筋や腰方形筋が働きます。
固有背筋は浅層の長背筋群と深層の短背筋群に区分され、長背筋群に分類される筋には有名な脊柱起立筋があります。脊柱起立筋は体表からも触知できる筋群で、背筋の代表格です。主に脊柱を伸展(後ろに倒す)させ、背骨を骨盤上に保つ作用がありますが、肋骨に付着する一部の筋には呼吸運動を補助する働きもあります。
・腸肋筋
・最長筋
・棘筋
の3つの筋から成っており、腰部で発達する腸肋筋は腰の回旋に、上の方に位置する最長筋や棘筋は頭や首の運動にも働きます。
これらの筋肉に加えて、背骨の深いところに位置する多裂筋や回旋筋などの細かな筋肉は、脊柱の関節運動制限に大きな影響を与えています。
よく背中が痛い、腰が痛いという背骨周りのトラブルでは、椎間関節という背骨の関節が上手く機能していない事が多いのですが、椎間関節は多裂筋や回旋筋が過度に硬くなった状態で動きが悪くなったことが原因で起こっていることが原因の一つです。
脊柱起立筋も同様に、強い負荷を背中に感じたあとに、過度に収縮して硬くなり動きが悪くなっていることがあり、自分でマッサージやストレッチをしてもなかなか改善しない方は、施術を受けることをお勧めします。これらを包み込んでいる胸腰筋膜のリリースを行い改善させていきます。
首の運動と働く筋
首の運動はうなずくときの屈曲、見上げる時の伸展、首をかしげる時の側屈、首を振る回旋という4つの動きに分けられます。首の運動に働く代表的な筋肉は胸鎖乳突筋で、首の運動のほとんど全部に関与しています。胸鎖乳突筋以外の筋肉は
・前屈=頚長筋、頭長筋、前頭直筋、外側頭直筋など
・後屈=後頭下筋の筋群
・側屈と回旋=頭頚部の半棘筋や板状筋、椎前筋や後頭下筋
細かな筋肉がたくさんありますが、胸鎖乳突筋をメインで覚えていれば大丈夫です。
胸鎖乳突筋という筋肉は、胸骨と鎖骨からスタートして、側頭骨の乳様突起という部分に停止するので、頭文字で胸鎖乳突筋といいます。
首の左右に存在し、両側同時に収縮すると、顎が上がった状態では顔を上に向ける(後屈)の運動。
顎を引いた状態では、顔を下に向ける(前屈)の運動となります。
どちらか片側のみの収縮では首をかしげて、顎先を反対に向ける運動作用が働きます。
この筋は、胸式呼吸運動にも働き、慢性心不全の患者さんは肩で息をする為、この筋が肥大して首が太く見えてくるそうです。
胸鎖乳突筋が拘縮(短縮・硬化)したものを斜頸といい、異常な緊張が生じることによって起こる痙性斜頸や、分娩時の障害などによって起こる先天性斜頸があります。
この筋肉は、首の多くの動きに関わるために、多くのトラブルの要因、痛みの原因にもなります。例えば、柔道の受け身のように、後ろに倒れた状態では頭を守るために首を前に屈曲しますが、この時、頭が地面に当たらないように踏ん張ると、胸鎖乳突筋は過度に働くことになり、緊張が残ります。
交通事故で追突された後も胸鎖乳突筋の痛みは感じやすく、寝違いなどでもこの部分が痛くなっていることは多くあります。
このように首の周りに痛みを感じた場合は、単にシップを貼って安静にするよりも、施術を受ける方が、改善が早くて予後がよくなります。
施術とは、どのようにして痛めたのか?胸鎖乳突筋がポイントになっているのか?片側なのか、両側なのか?上記のような解剖学的な知識と、損傷時の状況と実際の状態を触診して判断できることが全て揃って成立します。ご自身で知識がない状態のマッサージやストレッチでは、ただ痛い所を刺激するだけになってしまい、なかなか思うように改善しないとおもいます。
今回は首から背中に焦点を当てましたが、身体全てに同じことが言えます。脊柱のまわりにトラブルを抱えているかたは、一度、宜野湾市のさくがわ接骨院へご相談下さい。