整骨院や接骨院へ来院される方の代表的な損傷は、前回にお伝えした関節の損傷と、今回のテーマである「筋肉」です。医療的には筋肉ではなく「筋」とよび、たくさんの名前と種類があります。今回は筋の分類と名称、スポーツなどで痛めることの多い部位を紹介します。
筋の分類
筋は英語でmuscleといい、musはネズミを意味しています。形に由来するのか動きに由来するのかは不明ですが、昔の人には筋がネズミのように思えたのかもしれません。
筋は組織学的には、横紋筋と平滑筋に分類され、横紋筋はさらに骨格筋と心筋に区分されます。平滑筋は血管や腸の壁をつくる筋です。
・横紋筋ー骨格筋(いわゆる筋肉)
ー心筋(心臓の筋)
・平滑筋ー内臓の筋
神経支配の点からみると、
骨格筋は体性神経に支配され、自分の意志で動かすことの出来る随意筋。
心筋や内臓筋は自律神経に支配され、自分の意志で動かせない不随意筋となります。不随意筋には、皮膚の立毛筋や瞳孔の筋も含まれます。
スポーツなどで損傷し、接骨院で施術を受けることになるのは、主に自らの意志で動かすことの出来る骨格筋損傷です。
ケガという理由以外で体を施術するオステオパシー的なアプローチを行う際には、内臓マニピュレーションや神経への介入がありますが、それはひとまず置いておいて骨格筋のケガに焦点を当てましょう。
骨格筋について
骨格筋とは骨格を動かす筋の意味であり、形状・機能・起始停止などによって名づけられています。起始停止とは、ある一つの筋肉があってそれは端と端が骨にくっついています。この筋肉のスタート地点が起始、終着点が停止となります。起始は運動が小さく、停止は運動が大きくなっていて、筋の起始側を筋頭、停止側を筋尾ともいい、間を筋腹とよびます。
筋はその名称をみれば、どの部位の筋なのか、機能はどのような役割か分かることが多いのです。ただし、顔面筋(表情筋)のように皮膚に付着してこれを動かす筋(皮筋)もあり、通常はこれを含めて骨格筋とよばれています。
タイプⅠ 筋の形状から名づけられた筋
・筋頭が複数ある筋:二頭筋(上腕二頭筋、大腿二頭筋) 三頭筋:(上腕三頭筋、下腿三頭筋) 四頭筋:(大腿四頭筋)
頭の数が多いほど力は強いです。
・筋腹が複数ある筋:二腹筋(顎二腹筋)
分かりにくいですが、左右の枝分かれでなく、前後に腹が分かれている事を指しています。
・走行が明きらかな筋:直筋(腹直筋、大・小後頭直筋) 斜筋(上・下頭斜筋、上斜筋)
まっすぐだから直筋、斜めだと斜筋です。
・鋸歯様の形の筋:鋸筋(前鋸筋、上・下後鋸筋)
ノコギリの様な形ですね。
・ある種の形を示す筋:(三角筋、大・小菱形筋)
▽か?と言えば三角ですね。
・何かに似ている筋:(僧帽筋、半腱様筋、ヒラメ筋)
魚のひらめと言うことですが。。
・部位から名づけられた筋:(広背筋、大殿筋、側頭筋)
背中に広く位置しているから広背筋
タイプⅡ 作用から名づけられた筋
・伸筋として働く筋:(尺側手根伸筋、総指伸筋など)
手や足の甲側にあり、伸展という動きの作用をするのが伸筋。反対に手や足の表側にあり、屈曲の働きが屈筋です。
・屈筋として働く筋:(浅指屈筋、橈側手根屈筋など)
・内転に働く筋:(大内転筋、長内転筋など)
太ももを内側に内転させる内転筋。親指を外側に外転させる母指外転筋。
・外転に働く筋:(長・短母指外転筋)
・回内、回外に働く筋:(円回内筋、方形回内筋、回外筋)
手首から前腕を内側に回す動きが回内で、外側に回すのが回外。腕相撲とかは回内です。
・括約作用を有する筋:外肛門括約筋
肛門なので画像省略。肛門を閉める(括約)する筋。
・挙上に働く筋:(肩甲挙筋、精巣挙筋、肋骨挙筋)
首から肩甲骨について、見るからに肩甲骨を上に引っ張って挙上させてくれそうです。反対に下に引き下げるのが下制。
・下制に働く筋:(口角下制筋)
タイプⅢ 起始停止から名づけられた筋
・胸骨、鎖骨→乳様突起:胸鎖乳突筋
この筋が硬くてストレートネックとかも、あるある話です。
・肩甲骨→舌骨:肩甲舌骨筋
・烏口突起→上腕骨:烏口腕筋
・上腕骨→頭骨:腕橈骨筋
・茎状突起→舌骨:茎突舌骨筋
このように、筋の名前の由来は単純なものが多かったりします。スポーツなどでは、競技によって特徴的な動きで、よく使う筋がオーバーユースで痛みが出てくることがとても多いのですが、反対に急激な動きで作用とは逆の動きをした時に、肉離れのような損傷がおきます。
例えば、大内転筋は太ももを内側に寄せる動きの作用をしているが、サッカーボールを足の内側で蹴ったら、内転筋に対して外転の力が加わって損傷。
筋の関連構造について
筋肉の周辺には、関連する組織があり、結構聞いたことのある名前があると思います。
1.靭帯=二つ以上の骨などを連結する、線維性結合組織。例えば、腸脛靭帯は股関節と膝関節をこえて、腸骨から脛骨を連結します。
2.腱=骨格筋の付着部で骨や軟骨との連結に働く結合組織線維の束を腱といいます。筋が骨に付く前に腱に名前が変わっています。例、腓腹筋とヒラメ筋からアキレス腱。
3.筋膜=1~数個の筋を包む結合組織性の膜をさす。腱をまとめて被う筋支帯や、複数の筋を分ける筋間中隔も筋膜が肥厚したものです。
4.滑液包=滑液をいれる結合組織性の袋。摩擦を軽減して筋や腱の運動を円滑化します。また、腱を取り囲む滑液鞘は、周囲の線維性の鞘とともに腱鞘と呼ばれます。
一般的には、何でもかんでも「腱鞘炎」と言いがちですが、実際は腱の炎症は腱炎、腱が通るトンネルの炎症を腱鞘炎、腱と骨の間にあり、摩擦を軽減する袋に炎症が起きると滑液包炎などと呼ばれています。
筋の周辺関連構造は、ケガをするとダメージを受けやすく、筋自体の損傷とともに、早めの処置が必要となります。
筋や腱、靭帯、筋膜などを痛めてしまったら、早期に宜野湾市のさくがわ接骨院へご相談下さい。